Saturday 31 July 2010

ハンプトン・コート・パレス(Hampton Court Palace)

昨日はParisだと思ったら・・・また、ハンプトンコート・パレスに話は戻ってきたしまった。
忘れてしまわないうちに、済ましてしまおう。 今日は私的観光ガイド。

そもそもどういう宮殿なのか、という背景は上記リンクに任せてしまう。一言で言うと・・・イギリスのルネッサンス、チューダー朝時代にに建造され、その後、バロック期に増築されたイギリス王家の宮殿。
私の専門分野、中世からはかなり下った時代の宮殿なのだが、何しろ近くに住んでいる。電車で2駅、歩いても30分程度の距離なので、何かにつけてよく訪れる。先日標本箱に詰め込んだ、フラワー・ショウ、チューダー・コスチューム・イヴェント、どちらもここが舞台。

観光ガイドと言ったからには、まず案内事項をまとめてみよう。

交通アクセス: 旧国鉄・サウス・ウェスト・トレインズのLondonターミナル、Waterloo(ウォータールー)駅から、たいてい1番ホームから出る各駅停車Hampton Court(ハンプトン・コート)行きに乗る。電車は30分各に一本で、終点のHampton Courtまで25分の乗車。ここはロンドン・ゾーン6内なので一日パス(7.5ポンド 2010年7月現在)で行ける。最寄の駅から「ワンデイ・トラベルカード・オールゾーン」と言って買う。(知ってるって?)
ハンプトン・コート駅を出たらもう目の前は橋。駅からでもパレスは川向こうに見えているので、解りやすい。

Hampton Court Palace
橋の上から見たパレス。夏はもっと木が茂っているので、赤煙突がちらちら見える程度。

ハンプトンコートパレス:
年中無休、イギリス・サマータイム時期 10:00-18:00、イギリス・ウインタータイム時期10:00-16:30
入場料 大人14ポンド、子供7ポンド、学生・60歳以上11.5ポンド(2010年7月現在。詳しくはこちら


Hampton Court Palace - collage
正面は赤レンガのチューダー建築。デコラティヴな煙突が特徴的。2段目左はエントランス部の天井。中央のバラ模様はチューダーローズと呼ばれ、色つきの場合、外赤、中白の花びらに着彩される。バラ戦争で敵対していた、白バラを紋章とするヨーク家、赤バラを紋章とするランカスター家が、ヘンリー7世とエリザベスとの婚姻で合体したチューダー朝を象徴するもの。チューダーに関連した装飾に必ずと言っていいほど現れる。
その隣はグレート・ホールの天井部分。その下は、クロック・コートにかかる、当時の最先端テクノロジーの時計。

Hampton Court Palace - roofs
パレスの屋根と煙突を北側から写す。まるで一つの街の様。

Through the window
パレス内の窓からコート・ヤードを覗く。

Tapestry in the Great Wtching Chamber
ヘンリー8世の居室(Henry VIII's Apartments)内のGreat Chamberのタペストリー。

Hampton Court Palace, interior
同じく、Great Chamberのコラージュ。
右上のクッションの模様がチューダーローズ(これ自体は現代のイメージ・ディスプレイ。古いものではない)
左下の天使のレリーフはチャペルの入り口のもの。

Cardinal Wolsey, stained glass
このステンドグラスは、ここがもともとヘンリー8世の側近の、ウルジー枢機卿の建造であったことを示している。
あまりに豪奢に建てすぎたため、ヘンリー8世に目を付けられ「没収」されたようなもの・・・。

見どころの多いパレスだが、私の一番のお気に入りは、ここ、チューダー・キッチン。下の写真は、先日のコスチューム・イベントの日に撮ったもの。イベントでヘンリー8世と王妃に供する食事を実際にここで作っている。
イベントのない普段の日でも、ここではチューダー・コスチュームのシェフたちがいつも実演している。シェフ達は料理のみならず、愛想よくいろいろ質問にも答えてくれる。
<後日訂正:パレスで確認すると、チューダー・シェフ達の実演は、ホリデー・シーズンの週末のみ。「いつでも」ではなかった・・・。> 

Tudor Kitchen
左上が当時のレシピを書き写したもの。例の「揚げ餃子」ならぬ、「揚げラビオリ」のレシピ。
小麦粉に加えているのは、最初卵黄かと思ったが、尋ねてみたら、サフランを水で溶いたもの。
ラビオリの「皮」に黄色をつけるため。
小さな小皿には「具」が刻んで入っている。ナッツ、スパイス、ドライフルーツ類。

Tudor Kitchen
中段左では、マジパンで船を製作中。このあと、色粉で着彩したり、金箔で飾ったりもする。
下段右では、巨大な暖炉で肉を焼く。ここは季節を問わず、普段でもいつも火が入っている。
<暖炉の火は「いつでも」で正解>

Hampton Court Palace - collage
キッチンの周りには、食器室、食材室、キッチン・マネージャーの部屋等、
中には入れないが、ディスプレイを窓から覗ける部屋が続く。
これもなかなか面白い。写真撮りにも格好の題材。

Kitchen manager's desk
まるで、昔のその場に居合わせたかのような写真を撮るのが好きだ・・・。

ハンプトンコート・パレスは幽霊でも有名。とにかく、いろいろいるらしい。

Tudor corridor
このあたりも、かなり怪しい(笑)。
少なくとも昼間は、観光客でにぎやかなこととて、幽霊も出るに出られない。

一方、こちらはバロック様式の新宮殿。

Hampton Court Palace
天井も壁も壁画で覆われる。

Wall painting on th estaircase


最後にヘンリー8世と3番目の王妃ジェーン・シーモアとエドワード6世王子の家族の肖像。

Part of -The Family of Henry VIII- by an unknown artist c 1545
Part of -The Family of Henry VIII- by an unknown artist c 1545 英国王室所蔵

「暴れん坊王様」ヘンリー8世の、これが実は夢だったのかもしれない。現実にはかなわなかった夢。
ヘンリー8世が唯一愛したといわれるジェーン・シーモアは、エドワード王子出産14日後に産褥熱で他界する。
しかし、彼女の死後8年たってから描かれたこの肖像画でも、王にとっての「家族」とはエドワードと、そしてジェーン・シーモアのことだったのだろう・・・。

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Friday 30 July 2010

Paris イメージ

ここのところ歴史ネタが続いたので、今日は軽くParis風景。
フランス史は専門外なので余談は・・・まるでない(笑)。今年の3月にホリデーで滞在した時に撮ったもの。

Cafe 19/03/10
マレ地区のカフェ

Pantheon from Pont Louis Philippe 23/03/10
ルイ・フィリップ橋から見るパンテオン

Marais street
マレの街角

Street light
街燈

Seine
セーヌ川

Pl. des Vosges 23/03/10
プラス・デ・ヴォージュ

Light 23/03/10
再び・・・街燈

Hotel
ホテル窓

Street
午後の街角

Louvre
ルーブル


Parisといえばシャンソンで、私の好きなシンガーはJacques Brel(ジャック・ブレル)・・・だいぶ古い(50-70's)。
Jacques Brel "La Chanson des Vieux Amants" 昔の愛人を思わせるかのような街、Parisに捧ぐ。 BGMにどうぞ。

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Thursday 29 July 2010

Tudor (チューダー)ジュエリー

イギリス、チューダー・コスチューム・イベントに関連して・・・、この頃のジュエリーの話。

この前のイベントから、ご婦人方のジュエリーをクローズアップしてコラージュしてみた。(フォーカスが甘いのはご容赦)

Tudor jewellery
これらは、当時の肖像画に基づいたかなり忠実なリプロ(複製)

Tudor ladies-in -waiting
Part of The Family of Henry VIII- by an unknown artist c 1545 英国王室所蔵
これは侍女達の肖像画。右の女性はAの頭文字のペンダントを付けている。
当時はやっていたようで、アン・ブーリンのB頭文字のネックレスは有名。
この標本箱の最後に彼女の肖像画イメージを載せた。

Henry VIII and wives exhibition
Henry VIII and six wives exhibition @ Warwick Castle 2009
これは去年のウォーリック城の展示。
昨年はヘンリー8世即位500年記念だったため、どこもかしこもヘンリー8世関連のイベントやディスプレイを企画。
ここのものは、マダムタッソーとの提携の蝋人形展示なのだが・・・
ヘンリー君、6人の妻達に詰め寄られているようで形勢不利の模様。
ジュエリーのリプロはどれもお見事。


その、昨年のヘンリー君祭りを見越して、不詳私もチューダー風のペンダントを作ったことがある。

Tudor Series
Kotomiジュエリー 2007秋冬コレクション -チューダー・シリーズ。
右から時計回りに、キャサリン・パー(Catherine Parr ヘンリー8世最後の王妃)のペンダント。
プリンス・アーサー(Prince Arthur 夭逝したヘンリー8世の長兄)のペンダント。
エリザベス1世(Elizabeth I ヘンリー8世の娘 )のペンダント。
アン・オブ・クリーヴス(Anne of Cleves ヘンリー8世4番目の王妃)のペンダント
ヘンリー7世 (Henry VII ヘンリー8世の父王)のブローチ

これはその当時出展していた、トレード・ショウ用の話題づくりとして企画したもの。
私の場合ポリマー・クレイでベースを作るので、忠実なリプロというよりは「In-the-style-of」、チューダー「風」のし上がり。
イメージ・ソースは以下に。

Catherine ParrPortrrait of Arthur Prince of Wales(1486-1502)
キャサリン・パー と プリンス・アーサー :Hever Castle 所蔵

Queen Elizabeth 1st
エリザベス1世
これはまだ女王に即位するずいぶん前の「若き日」。

Ann of ClevesHenry VII
アン・オブ・クリーヴス と ヘンリー7世:Hever Castle所蔵

上のイメージでは、エリザベス1世は、複雑で危険な政治的状況の中で生き残るために、おとなしく地味に装っている。
女王に即位した後の華美な姿はご存知のことと思う・・・。

Portrait of Elizabeth I (1533 - 1603) The Armada Portrait 1600c.
Portrait of Elizabeth I - The Armada Portrait 1600c 撮影:lisby1@Flickr

しかし、ここで女王が手にしているペンダント・ヘッドは、昔の隠棲を余儀なくされていた時代のものと、同一のもの?のように見える。彼女を栄光に導いたタリスマン(お守り)的ペンダントなのかもしれない・・・。

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Wednesday 28 July 2010

ヘンリー8世のハネムーン - チューダー・コスチューム・イベント -2-

ハンプトンコート・パレスのチューダー・コスチューム・イベントの続編。

午後12時半ごろに、ヘンリー8世、ジェーン・シーモア王妃をはじめとして、随員一行はPrivy Garden(王室庭園)を抜けて、Thames(テムズ)川船着場へ向かう。London中心部のWhitehall Palace(ホワイトホール・パレス)から、ボートで到着するフランス大使と神聖ローマ帝国(ドイツ)大使を出迎えるのだ。

Ambassadors arrive at the Palace
総勢10隻(ぐらい・・・)のボートが、次々に到着。
赤い帽子を振って、観客に答えているのが、神聖ローマ帝国大使。
当時同盟国であったハンガリーの兵士を伴っている。
左下のイメージで手を振っているのが、フランス大使。
こちらも、当時の同盟国オスマン・トルコの兵士を伴っている。

昨年の、ヘンリー8世即位500周年記念のイベントでは、ヘンリー8世、キャサリン・オブ・アラゴン王妃と側近を乗せた総勢30隻近くのボートが、Tower of London(ロンドン塔)を午前中に出発。30km以上ある全行程をボートで漕ぎあがってきた。その時は引き潮と重なって、ボート・クルー大苦戦。3時半到着予定が一時間ずれ込んで、4時半に到着。5時間半漕ぎ続けたクルーはもちろん、フルコスチュームの俳優・女優達も、土手で待ちぼうけの観衆も、その観衆を退屈させないように即興で演奏を続けたミュージシャン、道化師も、一同・・・ヘトヘト(笑)。
今回は・・・本当にホワイト・ホールから漕ぎあがってきたのではなくて・・・、そういう設定なだけで、実は隣町のKingston(キングストン)あたりから出発したのではないかな、と疑っている。
いずれにしても、ボートの到着は見ていて本当に楽しい。
上のイメージの上段右と中段左のボートは、例のリドリー・スコット監督の「ロビン・フッド」で、最後の海上戦闘シーンで使われたものだそうだ。そういえば・・・こんな風だったな・・・。

Ambassadors
大使一行の到着。
左がフランス大使、右が神聖ローマ帝国大使。
ブルー系のシェードはフランスチームでセピア系のシェードは神聖ローマ帝国チーム。
お互いに反目しているという設定で、兵士達の小競り合いが、こののち繰り広げられる。

King is dining
パレス内のチューダー・キッチンで実際に調理された料理が王に供される。

両大使が給仕を勤めつつ、外交交渉の駆け引きの場、という設定なので、王妃は隣のEast Garden(東庭園)で鷹狩りを観覧。
実際には、パフォーマンスを分散して、観客が集中しすぎないようにという配慮。これも、昨年の一箇所集中大混雑からの改善策と見た。
供されている食事はチキンの丸焼き、左上これでは「揚げ餃子」に見えるが・・・「揚げラビオリ」でチューダー時代のトレンディーな料理。中身はスパイス、ドライ・フルーツ、ナッツ類。

Demonstration of arms
土手に着くや否や、小競り合いを繰り返していた兵士達は、王の食事の余興に模擬試合を命じられる。


右上がオスマン・トルコ兵士、左上と下がハンガリー兵士で、ヴァルカンの仇敵同士。なのだが・・・実は、どちらもハンガリー人のRe-enactors。リ・エンアクター、日本語だとどういえばいいのか?歴史物のコスプレのイベントに参加する人達、あくまでも趣味で・・・完全にプロの俳優ではない。こういう人達がヨーロッパには、かなりいる。趣味といっても武術のトレーニングはできているので、映画撮影のエキストラ等にはよく採用されているらしい。
ハンガリーとトルコの当時のコスチュームは、大雑把に言うと・・・大差がない。どちらも、ビザンティン時代のTunic(チュニック ― 長袖の長いローブ)の末裔。ハンガリーチームは、その上にDalmatica(ダルマティカ - 袖口の広い丈長の上着)の末裔を着ている。帽子は全く違う。
ビザンティンを魂の故郷と感じている(笑)私としては、このハンガリアン・チームのコスチュームがとても好きなのだ。昨年も彼らは来ていたが、その時あまりにカッコよかったので・・・自分で似たような部屋着を縫ってしまったぐらいだ。

Demonstration of arms
模擬試合、といっても迫力満点。
ちなみに、後ろにピンクや水色のタンクトップを着たような観客が大勢。
これをモーション・ブラーでぼかしたレイヤーを重ねる。
一枚一枚の写真をそのように処理して、それをまたコラージュのレイアウトに構成する。
とても時間のかかるポストプロセス・・・。

Demonstration of arms

Demonstration of arms

結果は一勝一敗。この後フランス兵と神聖ローマ帝国兵の模擬試合があるが、これも一勝一敗のあげく、乱闘状態になったところに、王の護衛兵が割って入り(後ろで仁王立ちになっている、例の、去年の王様。)両者をなぎ倒して「イギリス万歳」・・・というお気楽な結末。お祭り、お祭り。

まだ、いくつかハンプトンコート・パレス内のイメージが残っているので。後日「ハンプトンコート・パレス」という箱タイトルでまとめてみる予定。お楽しみに・・・。

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Tuesday 27 July 2010

新しいライン?

秋物のKotomiジュエリーとともに、実験的なジュエリーがいくつか仕上がった。

これらはRevampのオーガナイザーJenとの共同企画で・・・しかし、まだ企画の詳細はお伝えできない。希望的観測で9月頃、正式に企画が立ち上がったら、またお知らせする予定だが、まずはイメージだけ公開。

要するに・・・Kotomiジュエリーのスタイルを、Revampのデザインに持ち込んだもの。

N-1408
N-1408 センター:グリーン・ジャスパー、チェコクリスタル、
フューズドグラス、エメラルド、淡水パール、ガラスパール、鍍金チェーン

N-1409
N-1409 センター:ルチル・クオーツ、フューズドグラス、チェコクリスタル、
スモーキークオーツ、クラウドクオーツ、鍍金チェーン

N-1404
N-1404 センター:ルチル・クオーツ、フューズドグラス、チェコクリスタル、
スモーキークオーツ

N-1405
N-1405 センター:ターコイズ(リコンストラクト)、チェコクリスタル

N-1407
N-1407 センター:ターコイズ(リコンストラクト)、
フューズドグラス、ターコイズ風ガラスカボション

N-1402
N-1402 センター:ラブラドライト、ヴィンテージ・スワロフスキー、フューズドグラス、
ガラスパール、淡水パール


ヴォリュームがあって・・・自ずとかなりの上代になる。それをどういうマーケティングに持ち込むのか、というところにJenのアイデアが活きる・・・はず。秋から始まるイギリスのパーティーシーズンに向けて、なんとか、うまく走り出して欲しい新企画。


音楽で行くと・・・こんなイメージ、の、つもり。Dead Can Dance --- Carnival of Light
(かなりエスニックなフロントは、彼らのレコードジャケット。音楽だけ聴いてみて欲しい・・・。)

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Monday 26 July 2010

ヘンリー8世のハネムーン - チューダー・コスチューム・イベント -1-

土曜日のチューダー・コスチューム・イベントの写真中、約半分のポストプロセスが出来てきたので展覧しよう。

チューダー朝というのは、イギリスで言うところのルネッサンス時代。
中世のプランタジネット朝最後の王リチャード2世は、対仏百年戦争の後、ランカスター家のヘンリー4世によって廃位させられる。そのランカスター家も、ヨーク家との王位争奪抗争からバラ戦争を招き、国は荒廃する。
やがて、不毛な抗争に両家ともに消耗し、ランカスター家の血を引くヘンリー7世が即位、ヨーク家のエリザベスとの婚姻で両家が合体し、1485年チューダー朝が始まる。というのが、チューダー朝にいたるまでの、とても大雑把な歴史。

歴史の話より、まずはヴィジュアル。

Tudor Queen - Jane Seymour
Queen - Jane Seymour (女王 ジェーン・シーモア
この写真は、自分でもよく撮れたと思う・・・。
かなり近距離で撮れて、ちょうどカメラに向いてにっこり微笑んでくれた。
ポストプロセスなしでもO.K.の写真だったが、やはり絵画風に仕上げたくてテクスチャーをかける。

上のイメージでジェーン・シーモアのかぶっている「被り物」、まるで「角隠し黒ヴァージョン」に見えるが、初期チューダー朝コスチュームの典型Gable(ゲイブル)。ゲイブルの本来の意味は建築でいうところの「切り妻」。
確かに切り妻屋根の形をしている・・・。この黒い部分は、後ろに垂れ下がっている2枚の布飾りで、普段は後ろに垂れたままにしていることが多い。彼女の場合、有名なホルバインの肖像画に準じて巻き上げているのだろう。

Jane Seymour
Jane Seymour by Hans Holbein 撮影:lnor19@Flickr
これがイメージ・ソース。最も有名なジェーン・シーモアの肖像画。

King and Queen
ヘンリー8世とジェーン・シーモア
後ろにいる観客の首を(そして足を)Photoshopでちょん切るのはたいそう手間がかかる作業(笑)

イベントの設定では、彼女は妊娠中ということになっている。史実でもヘンリー8世の唯一の嫡男・エドワード王子(エドワード6世)はジェーン・シーモアが生んでいる。しかし、この結果産褥熱であっけなくジェーン・シーモアは亡くなってしまう。嫡男王子を産んだということもあるが、ヘンリー8世は実は彼女だけを愛していたのではないか?とも言われている。
そのエドワード6世も父王の死後、王位を9歳で継ぐが、6年後夭逝。そして、ちょっとした内紛の後、エリサベス1世の即位となる。 あぁ、また余計な歴史話・・・。

歴史話より、雑学。この王様のコスチュームを見て「!!??」と思われた方もあろうかと・・・股間の話。
チューダー・コスチュームを見慣れていないと、紳士方の股間の「コッドピース」に目がいって仕方がない・・・ことと思う。冗談でも卑猥でもなく真面目な話、歴史的にこんなものが流行っていたのだからどうしようもない・・・。誰が流行らせたのかは不明(私は個人的に、マッチョイズムの塊、ヘンリー8世が犯人だと見ている)、そして、なぜ「コッドピース」と呼ばれるかは知らない(また調べてみるが・・・)。できれば気にかけずスルーしていただきたい(笑)。

King and Queen
王と女王とその一行

これはハンプトンコート・パレスの「裏口」。
ハンプトン・コート・パレスは奇妙な造りで、正面が赤レンガの16世紀チューダー様式。そして裏の、テムズ川に連なる庭園に面したウィングは「新王宮」と呼ばれる、17世紀のバロック様式。
これは、ウィリアム3世とメアリー女王が「古臭い」チューダー様式の宮殿を嫌って、「トレンディ」に改築したため起きたもの。「裏口」と私は呼んでいるが、これはその「新王宮」側から庭園に出て行く出入口。白いスタッコ(漆喰)の柱に天井は、ヘンリー8世に時代にはありえない・・・。
ともあれ、これから一同は庭園をぬけて、テムズ川に向かう。テムズ川からさかのぼってくるフランス大使と神聖ローマ帝国(ドイツ)大使を、川辺でお出迎え。そのシーンはまだポストプロセスしていないので、第二部で・・・。

King and Queen
王と女王。
やわらかにイエロー/ブルーのクロスプロセスをかけて、ノスタルジックに。
つかの間の・・・幸福そうな二人。

King Henry VIII
今年のヘンリー君。ブルー系にトーンを落として。

「今年の」というのには理由がある。ハンプトンコート・パレスではこのようなコスチューム・イベントが年に1-2回催される。契約あるいは専属の俳優・女優さんが演じるのだが、何度も訪れていると、だんだん顔を覚えてくる。去年のヘンリー君は、今年は護衛兵の役で後ほど出てくる。

Political Tudor people
王の側近、某かの役なのだが・・・、それを覚えているほど歴史には詳しくない・・。
チューダー政界人ということにしておく。
彼はどうやらパレス専属の俳優、あるいは兼プロデューサーかもしれない。
いつも司会・進行役を兼ねていて、多才の上に、とてもいい味を出している。

Political Tudor people
同様、チューダー政界人達。
後ろの人物は、王のカトリック離脱―英国国教会設置に最後まで抵抗して獄死した知識人、
トマス・モアのような気がするが・・・史実と時代的には合っていない。
まあ、エンターティメントなので、多少の時代誤差は無視ということ。

Un-political Tudor Jester
ノン・ポリ(政治は抜き)の道化師。
彼は唯一の道化師役者で毎年大活躍。

Tudor Guard
護衛兵。
そう、彼が去年のヘンリー君。王様ぶりがよく似合ってたのだが・・・。
護衛兵でも、やくざの親分的なるいかつさを発揮(この人、尋常でなくでかい声が出せる俳優)。

Tudor Guard
若き護衛兵。こちらはなかなかのイケメン君。

Tudor Lady
最後は愛らしいチューダー・ガール。

どうしても、コスチュームの「オタク」ねたを書かずにはおれない・・・。
この彼女の被っている「被り物」は、ゲイブルではなくフレンチ・スタイルと呼ばれるもの。
形が柔らかで、重苦しい感じがない。これは、ヘンリー8世の2度目の妃、アン・ブーリンが持ち込んだもの、と言われている。(彼女は新興富裕階級の純粋なイギリス人だが、フランスで教育を受け、ヘンリー8世の最初の妃キャサリン・オブ・アラゴンの侍女を務める以前はフランス宮廷に仕えていた。)

Anne Boleyn
Anne Boleyn 撮影:lnor19@Flickr
アン・ブーリンのフレンチ・フッド

この後、エリザベス1世の時代にはこういった「被り物」はどんどん小さくなり、ヘア・バンドや髪飾り状のものになっていく。

明日は、またジュエリー。新しいラインの作品を展覧しよう。
イベントの続きはそのまた後に・・・。

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